38歳精神科医が腹筋割るログ

38歳3児の父が理想の体を目指して奮闘しつつ筋トレ情報を語るlogです。

肥満にまつわる6つの仮説と9つの真実

どうもみなさまモレキレカン!

いかがでしょうか。今日も元気に筋トレダイエットライフを送っていらっしゃいますでしょうか。本日も2013年にNew England Journal of Medicineに掲載された「Myths,Presumptions,and Facts about Obesity」という論文について続きを見ていきましょう。以前の記事もご参照ください。↓

https://morekirekan.hatenablog.com/entry/2019/05/29/155544

 今回ご紹介していくのは6つのPresumptions(仮説、仮定、推定)と9つのFacts(事実、真実)です。現在のところ肥満に関してまだまだ検証が必要な仮説と、既に効果が確定しているような真実についてになります。

元論文のリンクも貼っておきます。↓

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3606061/

 

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肥満にまつわる6つの仮説

まずは仮説から見ていきましょう。

1つめの仮説:朝食を定期的に食べることは、抜くことに比べて肥満を予防してくれる

内容:朝食を摂取する群としない群に分け体重の変化を比べた2つのランダム化比較試験があるが、試験内では体重に差は見られなかった。しかしながら、そのうちのひとつの試験では普段の朝食習慣とどちらの群に割り当てられたかが関連していることを示唆していた。

 

これは私の和訳が拙いのもあり、意味わからないですよね。これは要旨ではなく全文の和訳になります。恐らくは普段朝食を食べない人たちが朝食を食べる群に割り当てられたら下がったよみたいなことを言いたいのだと思います。

 

2つめの仮説:幼児期に身に着けた運動や食事の習慣がその後の人生における体重に影響を与える

内容:その人のBMIは年齢に応じて変遷していきますが、観察研究ではそれは人生早期の習慣によるものよりも遺伝型の方が影響を与えているということが示唆されています。無作為化されていない臨床研究では人生早期の習慣の方がより影響を与えているという結果が出ています。

 

人生早期の習慣も遺伝も両方が影響を与えるというのが実際のところなのかなと思っていたりしますが、どちらがより優位であるかはまだ分かっていないようですね。遺伝に関しては今のところは変えようがないですし幼児期の習慣も変えられないですが、自分がより気を付けなければならないのかどうかは知っているのといないのとで対策が全く異なってきます。

 

3つめの仮説:その他の行動や環境にどんな変化があったとしても、果物や野菜をより多く食べることは体重減少や体重増加の抑制に繋がる

内容:果物と野菜を摂取するのは健康に寄与するというのは事実です。しかしながら、その他の生活習慣に変化がない場合、体重が増加したり体重に変化がない可能性があります。

 

果物野菜さえ摂取していれば大丈夫かと言うとそれはもちろん違うでしょう。その行動単体がどの程度の大きさの影響を与えるかははっきりしていないようです。

4つめの仮説:体重サイクリング(リバウンドと減量を繰り返すこと)は死亡率の増加と関連する

内容:観察的疫学的研究は体重が不安定であったり、体重サイクリングが死亡率の増加と関連していることを示していますが、おそらくそれは健康状態が交絡因子となっています。動物研究ではこの疫学的な関連性というのは支持されていません。

 

これは2019年現在もまだ結論が出ていないですが、体脂肪の増減だけで考えるのか、いわゆる肥満という域まで体脂肪が増えた後に減らすのかでもかなり意味合いが違ってくると思います。

ちなみに交絡因子というのは、例えば酒をよく飲む人に肺がんが多いというデータが出たとすると、酒⇒肺がんという因果関係ではなく、酒を飲む人⇒煙草を吸う率が高い⇒肺がんが多い といったように裏に隠れてしまった影響を与える因子のことになります。

5つめの仮説:間食は体重増加と肥満に繋がる

内容:ランダム化比較試験の結果はこの仮説を支持していません。観察研究ですら間食が体重増加やBMIの増加に関連していることを示していません。

 

 現在はこれは仮説というよりは否定された嘘の方に近いのかなと思います。同じ総カロリーの中であれば食事回数を増やした方がより食事誘発性熱産生が多くなり、またインスリン分泌など内分泌の影響も有利に働くと考えられています。

6つめの仮説:歩道や公園が運動に利用可能であるような環境が構築されていることは肥満の発生率もしくは肥満率に影響を与える

内容:システマティックレビューによるとほとんど観察研究でしか、肥満のリスクと歩道や公園、建築物といった要素との関連を示していない。またこれらの観察研究は一貫した関連性を示せておらず、結論を導き出すことはできない。

 

公園や体育館が備わっていることが一部の運動好きの人のニーズを満たすだけになっているとするとそれは公的なお金の使い道としてどうかということになっていく話です。医学雑誌の論文なので、衛生学的な切り口の視点も出てきますね。

 

9つの真実

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1つめの真実:肥満において遺伝的要因が大きな役割を果たすが、遺伝が運命を決する訳では無い

内容:鍵となる環境要因を特定し、それにうまく影響を与えられれば、臨床的に有意な減量を行うことが可能である

 

そうだよなと思いながらも言い切ってくれてありがとう(涙) でも遺伝の影響が思っているよりも大きいということは認識した方が良さそうですね。周囲の方の体型を批判することは慎重に考えるべきです。

2つめの真実:摂取カロリーを減じることは体重の減少にとても有効だが、ダイエットをしようと試みることや誰かがダイエットをするよう推奨することは一般的に長続きしません

内容:この一見明白な違いは見逃されることが多く、治療可能性のあった肥満に対して間違ったコンセプトに導かれてしまう。この違いを認識することは以下のことを理解することを助ける。摂取カロリーの減量こそが求められる究極の食事介入であり、沢山の野菜を食べたり、毎日朝食を摂ることも全体の摂取カロリーを減量できてこそ役に立つということである。

 

これは肥満症を治療する医療者視点の話なので少しわかりにくいですね。本人の内的動機づけを構築する手助けをしていくことが必要です。また内容の後半に書いていることも重要ですね。摂取カロリーこそが基盤であり、その上に健康的な生活を送る工夫を積み上げていくことが意味があるということですね。

3つめの真実:どのような体重かや体重が減ったかには関わりなく運動のレベルが上がることは健康に寄与する

内容:例え体重が減らなかったとしても、運動は肥満が健康に与えるダメージを軽減してくれる。

 

運動を行うことは体重に関わらず体を健康的にしてくれるというのは明るい情報ですよね。体重減らないから意味ないと考えてしまいがちですが、たとえ体重が減らなかったとしても毎朝ウォーキングをすることは健康にしてくれるということです。どうしてもダイエット全盛の現代ではどのくらい体重が減ったかにしばられてしまいがちですが、運動を楽しむという視点で継続していくのも良いかもしれませんね。

4つめの真実:十分な量の身体活動または運動は長期的な体重維持に役立ちます

内容:身体活動プログラムは、特に子供にとって重要ですが、身体活動が体重に影響を与えるには、ただ単に参加するだけではなく、かなりの量の運動を要する。

 

これは当たり前すぎる話に感じると思いますが、医学の世界では当たり前に思えることも検証を行い確認をしていきます。そうして初めて事実と認定されます。またプログラムに参加しているからOKではなくてしっかりとした活動量が必要だというのも当然ですよね。

5つめの真実:減量を促進するような状態を継続することはより低い体重の維持を促進する

内容:肥満は継続的な管理を要する慢性疾患だと考えることが長期間の体重減少を維持するのに最も良い考え方である

 

これは実は一番心に刺さりました。「肥満は慢性疾患と考える」というのは自分の過去を振り返っても納得できる部分が大いにあります。もともと太るような行動を選んでしまう癖を自分で自覚しています。例えば、コンビニでパスタを選ぶ際に2つの物でどちらでもいいなと迷うんですが、最終的に手に取る方は決まってカロリーが高いんです!それも100~200kcalも高い・・・・・。何回か検証したんですけど10回中10回の精度でそうでした。最近では自分が好きなものは脂質と砂糖と塩であることを発見してしまったので逆にそういったものをうまく楽しみとして使えるように工夫をしています。たんぱく質大好き人間に生まれたかった・・・。

6つめの真実:体重過多な子供に対しては、両親を巻き込んで自宅でプログラムを行うことがより体重を減らしたり維持することにつながる

内容:学校やその他の自宅外でのみ行われるプログラムは便利であったり好都合であったりするかもしれませんが、両親を巻き込んで自宅でプログラムを行った方がより良い結果に結びつきやすい。

 

子供の習慣に対して親が与える影響というのはやはり大きいですよね。三つ子の魂百までなんて言ったりしますので、子供たちが将来に渡り困らないように、本人たちが楽しんで食育や運動を教えられたらと考えています。

7つめの真実:食事の提供や食事を置き換える商品の利用はより大きな体重減少を促進する

内容:食事に関して枠組みが設けられていることは、バランス、多様性、適度さを基本とした一見全体を考えたプログラムに比べてより体重を減少させる。

 

取り合えず色々工夫する前に食事をがっちり固めることが重要であるということですね。肥満解消には一にも二にも食事管理で、三、四くらいに運動や習慣が来るという感覚ですね。

8つめの真実:いくつかの医薬品は臨床的に意味のある体重減少を達成し、その医薬品が継続される限りその減少が維持される

内容:我々は肥満を予防するために環境や個人の行動をどのように変化させれば良いかを学んだことで、肥満者に対して適度に効果的な治療を提供することが出来るようになった。

 

肥満は様々な疾患のリスクファクターですので、医療の世界でも一次予防の観点から非常に重要視されています。また政策上ももっと重要視されるべきかなとも思います。

以下のリンクのLancetという医学雑誌に2017年に載った論文では中年時の肥満や、中年時の運動不足は高齢になってからの認知症のリスクファクターであることが記載されています。現在の健康だけではなく後々の健康にも大きな影響を及ぼすことですので、今からこつこつ頑張っていきましょう。

↓ Prevention and management of dementia:a priority for public health

https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(17)31756-7/fulltext

9つめの真実:適応のある患者では肥満手術は長期的な体重減少をもたらし、そして糖尿病の発生率と死亡率の減少をもたらす

内容:重度の肥満者の場合、肥満手術は人生かを変え、そして場合によっては救命にも繋がる治療である

 

肥満手術?なにそれ受けてみたいって思う方はいっぱいいらっしゃると思いますが、日本での保険適応は、私が調べた範囲では、18歳から65歳の方で、BMI35以上でかつ、高血圧、糖尿病、高脂血症のいずれかを有する方になっています。除外される方もいらっしゃるので実際に診察を受けなければ手術適応か否かは決まりません。腹腔鏡下で胃の半分以上くらいを切除するという方法ですので、その後の人生にも影響を大きく与えます。なので、減量が困難で健康にも影響が今出てきてしまっている方は検討してみられるのもよいかもしれません。

 

以上、少し長くなりましたが、6つの仮説と9つの真実でした。

みなさんの健康に少しでも役立つ情報はありましたでしょうか。

本日も最後まで読んで頂きありがとうございました!